国際女性デー特集:SAAエチオピアの職員が語る、農業と女性の可能性

インタビュー
2026年3月8日

3月8日の「国際女性デー(International Women's Day)」に合わせて、ササカワ・アフリカ財団(SAA)エチオピア事務所で「栄養に配慮した農業」のテクニカル・コーディネーターを務めるアベラシュ・ツェハイさんにお話を伺いました。

アベラシュさんはエチオピアの農村で生まれ育ち、現在はSAAの職員として、収穫後処理・加工技術の普及や女性の経済的自立の支援に取り組んでいます。
彼女へのインタビューを通じて、栄養改善の取り組みが女性やその家族の暮らしにどのような変化をもたらしてきたのか紐解いていきます。


3月8日の「国際女性デー(International Women's Day)」を記念し、ササカワ・アフリカ財団(SAA)エチオピア事務所で「栄養に配慮した農業」のテクニカル・コーディネーターを務めるアベラシュ・ツェハイさんをインタビューしました。

アベラシュさんはこれまで、農産物加工事業の強化支援や女性グループの育成、収穫後処理・加工技術の普及、そして地域の家庭における栄養改善の推進において中心的な役割を果たしてきました。

献身的なリーダーシップと地域社会とのパートナーシップに支えられた彼女の取り組みは、「女性のエンパワメントこそが、より健全でレジリエントな社会を築く鍵である」という信念に根ざしています。

本インタビューでは、アベラシュさん自身のこれまでの経験や、そこから得た教訓、そして現在の活動を支える視点について語っていいます。


Q. 農業や栄養分野の仕事を志したきっかけと、これまでの歩みについて教えてください。

私はエチオピア南部の農村地域、フィシャ・ゲネットで生まれ育ちました。幼い頃から、農村の家庭、とりわけ女性たちが食料や栄養を確保するうえで直面する多くの困難を目の当たりにしてきました。こうした経験が、農業と適切な栄養の重要性に関心を持ち、この分野に取り組む原動力となりました。

家政学とテクノロジーのディプロマを取得した後、ホームエージェントとして農村女性と密接に関わる仕事を始めました。栄養や家庭管理、食料生産に関する研修を行い、女性が収入向上につながる活動に参加できるよう支援しました。

その後、二人の子どもを育てながら仕事と家庭を両立させる中で、社会学と社会行政の学位取得にも挑戦しました。遠隔地の自宅から長距離を移動して授業に通うこともありましたが、家族の支えと自身の強い意志によって乗り越えることができました。

こうした経験を基盤に、農村地域における女性のエンパワメントや、有害な慣習の改善に取り組むリーダーシップの役割も担うようになりました。家族と離れてアディスアベバで働くことになりましたが、女性や少女たちの可能性を広げ、持続的な変化を生み出したいという思いが私を支えていました。

その後、オランダでマネジメントと開発を学ぶ奨学金の機会を得て、ジェンダーと農村生計についての理解をさらに深めました。帰国後も、女性のエンパワメントを推進し、家族のより良い未来づくりを支援することに力を注いでいます。

現在はササカワ・アフリカ財団で、栄養に配慮した農業の推進やポストハーベスト技術の普及、そして女性が小規模な農業ビジネスを築き、より安定した家庭生活を実現できるよう支援する活動に取り組んでいます。女性たちが地域や家庭のリーダーへと成長していく姿を見ることは私にとって大きな喜びであり、彼女たちの強さと努力に日々励まされています。


Q. 長年この分野で活動を続ける中で、どのようなことがモチベーションとなってきましたか。

女性やその家族、そして地域社会の暮らしに、目に見える前向きな変化が生まれることが、私にとって大きな原動力となっています。女性が経済的に力を得ることで、子どもたちの教育機会が広がり、住環境が改善され、家族がより栄養価の高い食事を得られるようになります。

また、脱穀機やシェラー(殻むき機)、密閉貯蔵といった収穫後処理技術の普及も、私の励みとなっています。これらの技術は収穫後の損失を減らすだけでなく、女性の労働負担を大きく軽減し、生産性や効率の向上、さらには生活の質の改善にもつながっています。


Q. 女性グループとの活動の中で、女性のリーダーシップや経済的エンパワメントの重要性を実感した出来事はありますか。

女性の農産加工グループとの活動の中で、特に印象深いのが「アレン・テスファ農産加工グループ」の発展です。2010年、アムハラ州エネビ・チファール・ケベレ(村)で37人の女性が集まり、このグループが結成されました。「アレン・テスファ」はアムハラ語で「私たちには希望がある」という意味で、彼女たちの志と決意を象徴する名前です。
継続的な能力強化支援のもと、グループは2012年に農産加工事業を開始しました。自らの資金と地方政府の支援を得て、製粉施設と店舗を建設しました。土地の確保など当初はさまざまな課題がありましたが、ジェンダー意識向上の研修を通じて地域社会の理解が進み、夫や地域の指導者も女性たちの取り組みを後押しするようになりました。

現在、グループは付加価値を高めた穀物や豆類、香辛料などを生産・販売するとともに、地域住民に製粉サービスも提供しています。共同事業ならではの課題もありますが、強い結束力と着実な成長により、最近では新たな店舗や倉庫も整備されました。多くのメンバーがビジネスや財務管理のスキルを身につけ、中には独立して自らの事業を始めた人もいます。
私が特に感銘を受けているのは、女性たちの自信とリーダーシップの大きな成長です。かつては人前で話すことに躊躇していた女性たちが、今では集会で堂々と発言し、地域のリーダーとして活躍するようになっています。


Q.収穫後処理の機械化や農産加工事業の導入は、地域社会における女性の役割にどのような変化をもたらしましたか。

農村地域では、収穫期は女性にとって最も忙しく、身体的にも大きな負担となる時期でした。女性は家庭の仕事に加え、収穫物の回収や運搬、穀物の選別、貯蔵管理など、収穫に関わる多くの作業を担っていました。
しかし、脱穀機やシェラー、密閉貯蔵技術といったポストハーベスト技術の導入により、こうした負担は大きく軽減されました。作物を畑で直接処理できるようになり、手作業や繰り返しの作業が減少したのです。
その結果、女性は収入創出活動や地域活動に参加する時間を確保できるようになりました。これらの技術は、女性の労働負担を軽減するだけでなく、女性を「裏方の労働者」から、地域社会の経済を支える主体へと押し上げる大きな変化をもたらしています。


Q. なぜ女性は農業に参加するだけでなく、リーダーとして革新を担うことが重要なのでしょうか。

女性は農業労働力の大きな割合を占める一方で、育児や家庭管理、家族の栄養管理などの重要な役割も担っています。家族の食事を支える立場にある女性は、何を、いつ、どれだけ生産すべきかについて、日々の暮らしの中で培われた実践的な知識を持っています。
そのため、女性の役割は単に農業に参加することにとどまるべきではありません。女性がリーダーとして意思決定や革新に関わることで、農業はより栄養を重視したものとなり、食料安全保障や食の多様性の向上、さらには持続可能な資源管理にもつながっていきます。


Q. 長年SAAで活動する中で、どのような経験がご自身の成長につながりましたか。

SAAは、私にとって大学のような存在でした。特に、収穫後管理に関する実践的な知識を学ぶ貴重な機会を得ることができました。
また、国内各地のパートナーや多様な関係者と協働する機会を通じて、技術的な専門性だけでなく、リーダーシップの面でも大きく成長することができたと感じています。
こうした経験を通じて、農村女性のエンパワメントの推進や栄養改善、さらにはレジリエントな収穫後システムの構築に、より大きく貢献できるようになったと考えています。


Q. 国際女性デーにあたり、これからキャリアを築こうとする若い女性たちへメッセージをお願いします。

成功の土台となるのは、強さとレジリエンス(困難から立ち直る力)です。挑戦や困難は誰にでも訪れますが、大切なのはあきらめずに前に進み続けることです。
粘り強く努力を重ね、自分を信じ続けることで、きっと自分らしい意義のあるキャリアを築くことができると思います。

【LinkedIn】Happy International Women's Day

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