開催報告:TICAD8公式サイドイベント(第二弾)「アフリカにおける農業普及システムの多元化とデジタル化:-世界的食糧危機に求められる農業変革-」

ニュース
2022年9月9日

2022年8月26日、ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、IFPRI(国際食料政策研究所)、AFAAS(農業普及サービスのためのアフリカフォーラム)と共同で、「アフリカにおける農業普及システムの多元化とデジタル化:-世界的食糧危機に求められる農業変革-」と題したオンラインシンポジウムを開催いたしました。本イベントは、環境再生型農業に焦点を当てた8月5日開催のフォーラムに続く第二弾目となるTICAD8 公式サイドイベントで、世界各国から210名を超える視聴者が参加しました。

冒頭の開会の辞では、SAAのRuth Oniang’o会長、IFPRIのJohan Swinnen事務局長、AFAASのSilim Nahdy事務局長、日本財団の笹川陽平会長が挨拶を述べました。気候変動、土壌肥沃度の低下に加え、昨今のウクライナ戦争を起因とする肥料・燃料価格の高騰など、アフリカの小規模農家が直面する複雑な課題に対し、従来型の公的普及システムを補完する、民間セクターや農家グループなどを巻き込んだ多元的な普及アプローチ構築の重要性と、そこにデジタル技術の果たす重要な役割と可能性について語られました。そして、農家のレジリエンスを高めるために、本イベントを足がかりに関係機関のパートナーシップを強化する必要性が述べられました。

特別講演において、アフリカ開発銀行のBeth Dunford農業・人材及び社会開発担当副総裁は、スマートフォンなどのデジタルツールを所有した小規模農家は、収量と収入が40~70%増加したとするレポートを引用し、アフリカでデジタルツールの利用者が急増する今、農業普及システムの多元化・デジタル化は、まさに肝要な取り組みであると指摘しました。しかし、デジタル技術の利用者は、アフリカ農家の約10%にとどまっており、スケールアップの必要性があるとした上で、アフリカ開発銀行の金融支援プログラムを紹介し、農業を未来のハイテクビジネスと捉え、アフリカが農業大国になることを期待したいと述べました。

特別講演を行うアフリカ開発銀行のBeth Dunford農業・人材及び社会開発担当副総裁

次に、IFPRIシニア・リサーチフェローのDavid Laborde氏が、ウクライナ戦争に起因する世界的食料・肥料価格高騰によるアフリカの小規模農家への影響について、データを交えながら発表。サブサハラ・アフリカは、肥料の大部分を輸入に頼っており、肥料価格高騰が食料安全保障を脅かしていることを指摘し、肥料の価格動向や効果的な使用方法、代替農法を農家に伝達するため効果的な普及サービスの構築が重要であると述べました。

続いて、IFPRIシニア・リサーチフェローのKristin Davis氏が、農業普及サービスの多元化・デジタル化の取り組みについて、ウガンダ、エチオピア、コンゴ共和国、ルワンダなどの事例を用いて説明。ガバナンス、資金、組織と経営、普及員と農家の関わり方などが、農業普及サービスのパフォーマンスに影響を与えるとし、政府や開発パートナーは、協力して普及サービスを支援する必要性を指摘しました。

IFPRIシニア・リサーチフェローのDavid Laborde氏
IFPRIシニア・リサーチフェローのKristin Davis氏

その後、現場報告として、4名の登壇者が各団体の具体的な事例と教訓を共有しました。Max Olupot氏(AFAAS プログラム・ディレクター)は、効果的な多元的農業普及システムの構築に向けた提案を行い、Mel Oluoch氏(SAA戦略パートナーシップ事務所長)は、エチオピア、ナイジェリア、ウガンダ、マリにおける、スマートフォンやアプリなどを活用した農業普及デジタル化の具体事例を紹介しました。Bernard Vanlauwe氏(IITA中央アフリカ・天然資源管理 R4Dディレクター)は、ナイジェリアのキャッサバ農家を対象としたAKILIMOアプリのインパクトについて、Joseph Bbemba氏(SAAウガンダ事務所 副所長)は、多元的な農業普及モデルとして、ウガンダの農業組合であるワン・ストップ・センター(OSCA)を紹介し、4000名を超える所属農家に対し、同組合がアプリを活用しながら種子や肥料の共同購入、共同出荷、金融サービスの提供などを行っていることが紹介されました。

パネルディスカッションでは、SAAのMel Oluoch戦略パートナーシップ事務所長がモデレーターを務め、4名のパネリスト:内藤 智之氏(神戸情報大学院大学 副学長)、Yvonne Pinto氏(世界銀行 デジタル農業イノベーション リードスペシャリスト、Aline Impact社 マネージングディレクター)、天目石 慎二郎氏(JICA経済開発部次長 農業・農村開発第二グループ長)、Yenenesh Egu, Bezabih氏(エチオピア農業省 農業普及局長)を迎え、農業普及の多元化とデジタル化の取り組みについて議論を展開。農家がデジタルツールを活用し、生産性と所得の向上を目指すためには、ユーザーの視点を確実に取り入れる、ニーズに合わせた多元的なアプローチを採用するとともに、若者・女性などを含む包括的な視点を含めた、デジタル農業政策の取り組みを体系的に評価する必要性など、重要なポイントが明らかになりました。

パネルディスカッションの様子(左上 Mel Oluoch、中央 天目石 慎二郎氏、右上 Yvonne Pinto氏、左下 内藤 智之氏、右下 Yenenesh Egu, Bezabih氏)

最後に、IFPRIのCharlotte Hebebrandコミュニーケーション・広報局長とSAA北中真人理事長が、全ての登壇者に感謝の意を表しました。Hebebrand氏は、新型コロナウイルスの世界的流行やウクライナ危機によりSDGsの進捗が後退したことに触れ、デジタルを活用した農業普及をユーザー視点でスケールアップし、モニタリング評価を行う重要性を述べました。北中理事長は、様々なアクターが各国の実情に相応した農業普及を議論し、予算を振り分ける必要性を述べ、そのスケールアップには、デジタル技術が有効であり、農家の組織化を通じて、多元的に地域を発展させる重要性を強調しました。

SAAは、今回のフォーラムで得られた課題や教訓を踏まえ、小規模農家のレジリエンスを一層高めていくため、アフリカの農業変革を加速させていきます。IFPRI、AFAASをはじめとする様々なパートナーとの連携を一層強固なものとし、”Walking with the Famer”を モットーにこれからも歩んでいきます。

本イベント動画(英語版)

講演者のプレゼンテーション資料一式
Q&Aボックスの質問と返答集(更新中)

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