物乞いから生産者へ:ナイジェリア・ゴンベ州ビリリにおける身体障がい者自助グループの活動

ナイジェリア
2021年12月8日

ナイジェリア、ゴンベ州の「MPCSビリリ」は、身体に障がいを持った農家の日常助け合いを目的に結成された自助グループです。グループは10年以上前に結成されましたが、十分にその役割を果たしてきたとは言えず、障がいを持った人々は路上で物乞いをする生活から抜け出せずにいました。しかし、2018年にSAAが支援したのをきっかけに、自助グループは本来の目的に沿った機能を果たし、メンバーの生活は大きく改善されました。

MPCSビリリのメンバー15人(男性8人・女性7人)は、2019~2021年にかけ、集団力学(グループ・ダイナミックス)、アグリビジネス、共同出荷に関する研修を受けました。また、2020年には新型コロナウイルス感染拡大の影響に対する緩和策として、肥料8袋・除草剤4L・トウモロコシ改良種子20kgの支援を受けました。グループのメンバーであるジョン・エマニュエルさんは次のように証言します。「私たちMPCSビリリは、家族の助けも借りながら、2.5トンの収穫を得ることができました。家庭で消費する食料として十分な量です。また、小規模ビジネスに関する研修のおかげで、2019年は、0.5haのトウモロコシを栽培し、その販売収益で3頭の羊を購入することもできました。」


MPCSビリリでは、現在、羊6頭・ヤギ3頭を飼育しています。グループメンバーによる物乞いは、2021年4月に完全になくなり、物乞いの代わりに、個人商売や家禽の飼育を始めています。

前述のエマニュエルさんは、自助グループの会員条件として、以下の項目を挙げています。

1. メンバーは、家庭のニーズと商売のために家禽を飼育する。
2. メンバーは、家族のために、少なくとも0.5haの穀物とササゲを栽培する。
3. グループは、各メンバーに数頭の割り当てができよう反芻動物の数を増やす。
4. グループは、収入獲得のためトウモロコシの脱穀機購入を計画し、若者をオペレーターとして雇用する。


エマニュエルさんは、「今ではビリリの路上で物乞いをしているメンバーは一人もいません」と胸を張ります。SAAのアドバイスを受け、メンバーはグループ活動以外にも、さまざまな事業に取り組み、健康に良い食材を口にする余裕ができたと言います。メンバーのマラタ・オビダさんは、「私たちが飼っている鶏は、収入を得るためだけでなく、栄養豊富な食材にもなります。私たちの生活は、経済的に向上するとともに、食生活も豊かになりました」と語ります。


マラタさんによると、女性会員の中には、子どもたちを私立学校に通わせるために、髪結いビジネスなど小さな商売をして家族を支える人もいると言います。「SAAの支援以前は、子どもたちは全員公立学校に通っていましたし、家族を養うためには、物乞いをせざるを得ませんでした。しかし、今では物乞いをしているメンバーはいませんし、物乞いに戻るつもりもありません。」ブレッシング・ヤクブさんは、次のように述べました。「物乞いは、時間の無駄でした。私たちを厄介者と考える人たちがいて、みじめな思いをしていました。でもそんな時代はもう終わったのです。」モハメド・ウスマンさんは、次のように語りました。「SAAが介入する前は、経済状態が悪く、ほとんどの子どもが公立学校に通うか、まったく学校に通っていない状態でした。今は食生活も改善され、子どもたちも良い学校に通うことができています。」

グループには、農地が家から遠い、羊やヤギの飼育コストが高い、障がいのために銀行からの融資が受けづらい、政府からの支援が脆弱であるといった課題も残されています。しかし、2019年のSAA介入から3年、「MPCSビリリ」のメンバーは物乞いから生産者へ、社会に貢献する立場として、尊厳ある生活を送ることができるようになりました。その変化は、本人だけでなく、家族全体の食生活、教育にも良い影響を与えています。

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