高騰する化学肥料の使用を抑え、持続可能な収量の向上に貢献する堆肥

エチオピア
2023年5月30日

エチオピアの南部諸民族州の農家は、堆肥づくりとその使用にかかる研修を受講し、肥料購入の支出を半減させることができました。 堆肥は、土壌構造の改善、土壌中の有用微生物の増加、作物への栄養素の供給、収量増加など多くのメリットがあります。しかし、材料となる作物残渣や家畜の糞は現地では飼料や燃料などに使われることや、堆肥製造にかかる知識(炭素と窒素の配合比)不足、発酵過程で発生する悪臭などの課題により堆肥製造を完全に諦めてしまう農家もあります。

上述の課題を解決するため、ササカワ・アフリカ財団(SAA)エチオピア事務所は、アンガチャ地区及びメケット地区の農家と農業普及員を対象に有用微生物(EM菌)を用いた堆肥づくりの実地研修を実施しました。 EM菌は、乳酸菌、光合成細菌、酵母を中心とした天然由来の有用微生物の集まりで、土壌生態系の多様性を向上し作物生産のための健全な土壌環境づくりにします。EM菌を用いた堆肥づくりは、有機物の分解を5~6倍に早め、臭いの発生を抑制する効果があります。

2021年以降、SAAはアムハラ州と南部諸民族州の農業普及員46人(女性12人)と小規模農家244人(女性67人)を対象に、EM菌を使った堆肥作りの実地研修を実施しています。 研修を受講した農家は、化学肥料の半分を堆肥に置き換えた場合も、収量が維持できていると報告しています。これは、エチオピアの多くの堆肥研究において、「有機肥料は化学肥料の最大50%を代替できる」とするデータと一致します。研修を受けた農家は1ヘクタールあたり4トンの堆肥を、推奨される化学肥料の半分(1haあたりNPS肥料50kgと尿素肥料50kg)と組み合わせて施用しています。 SAAの研修を受けた農家が生産した堆肥は、現在の価格(0.1トンあたり68.66米ドル)に基づくと、化学肥料約3.5トン(2,403米ドル)分となります。

堆肥(有機肥料)により化学肥料を補完する試みは、土壌肥沃度の向上と環境負荷の低減のためにSAAが推奨する総合的土壌肥沃度管理(ISFM)システムの一環であり、堆肥は農家が化学肥料への依存から脱却するための、環境再生型農業の重要な要素となっています。  

SAA E-Newsletter 2023年5月発行 エチオピア特集号より転載

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