【JICA海外協力隊員 活動紹介1】森田麻衣子さん~ウガンダの稲作農家の農業技術の普及、生計向上を目指して~

2022年4月21日
女性農家を訪問し、ヒアリング・意見交換を行う森田さん
女性農家を訪問し、ヒアリング・意見交換を行う森田さん

SAAウガンダ事務所では、例年JICA海外協力隊員(コミュニティ開発)の受け入れを行っています。今回は、ルウェロ県ズィロブウェの農業センター(One-Stop Center)で2021年9月から活動をしている森田 麻衣子さんに活動を紹介してもらいました。
 

赴任先は、SAAが支援する地域の農業センター

私は、ルウェロ県ズィロブウェ町(首都カンパラから約1時間半北に進んだところにある小さな町)で、稲作農家の収入向上支援を行っています。ウガンダでは近年コメの消費量が増加しており、換金作物としての重要性が高まっています。その一方で、稲作技術の普及は進んでいないなど課題もあり、農家の大幅な収入向上に至っていない現状があります。コミュニティ開発という職種はいわば何でも屋。現地コミュニティの中に入り、課題を探り改善の道筋を地域住民と共に立てていきます。

受入機関はSAAウガンダ事務所ですが、実際の配属先はSAAが支援しているZAABTA(Zirobwe Agali Awamu Agri-Business Training Association)という民間農業センターです。ZAABTAはルウェロ県の他にも近隣5県の農家に対して、精米・製粉、ローン貸付、農作物運搬、農業研修等のサービスを提供しており、この地域では比較的大規模な農業ビジネスを展開しています。

民間農業センターZAABTAの精米所

コロナ禍での渡航制限、募る現地への思い

2021年9月にウガンダに来てから約半年が経ちました。本来であれば2020年の4月に赴任する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い渡航が直前で延期となり、それから約1年半後の渡航となりました。

私は待機期間中、幸運なことに前職の同ポジションに戻ることができました。日本の政府機関でNGOに資金協力を行うための審査業務をしていましたが、日本で国際協力の事務仕事をしていると、現場に行きたいという想いは募っていくばかりでした。待機期間が長期化し渡航を断念する仲間もいる中、ようやく渡航再開となり日本では緊急事態宣言下の最中、ウガンダへ旅立ちました。コロナ禍で遠い海外へ行くことの恐怖心や不安な気持ちもありましたが、ウガンダに到着した日、エンテベ空港から外に出るとウガンダの爽やかな心地よい風が迎えてくれ、気持ちがホッとほぐれたことを覚えています。

女性農家を対象に、歩いてフィールド調査

配属先の赴任初日に職場の上司に言われたことは、「農業に関係なく、したいこと何してもいいよ」でした。何をやってもいいというのが一番困るという協力隊あるあるの洗礼を初日から受けましたが、稲作の要請で来ていることもあり、女性の稲作農家に的を絞り活動することにしました。女性は農作業における重要な担い手ですが、家庭内での意思決定や収入管理などの権限は夫が持つなど弱い立場にあると聞き、女性農家のエンパワメントに繋がる活動がしたいと考えました。

しかし、コロナ禍以前はJICAからバイクが貸与され、バイクで農家を巡回することが協力隊員の主な活動でしたが、現在コロナ禍でバイクの使用が禁止となっているため、街中にある配属先から農地へ行くのに車両手配、ドライバー確保などスケジュール調整が必要で、フィールドに行きたい時に簡単に行けないという問題が出てきました。そのため、まずは歩いて行ける農地へ行ってフィールド調査をしたり、配属先が運営する精米所に精米に来る農家さんにヒアリングし、抱えてる悩みなどについて聞くことにしました。

稲作の基本がわかる現地語ブックレットを制作・配布

毎日、様々な農家さんと話をするうちに、町から離れた村に住み、スマートフォンやパソコンを持たない彼らが入手できる情報は、非常に限られているということがわかりました。ある日、稲作栽培の基本が書かれたハンドブックを配布すると、知らないことが多いようで真剣に見ていました。そこで、英語が読めない農家さんのために、現地語翻訳を稲作栽培の知識のある同僚に依頼。今後はより多くの農家さんに読んでもらえるよう、ブックレット化し配布しようと考えています。

現地の先進農家の取り組みを普及する橋渡しに

ヒアリングを行う中で、先進的な取り組みをする農家さんにも出会いました。例えば、日用品を用いて、自ら工夫を凝らした農機具を製作し、低コストで効率よく農作業を行っている農家さん。自ら情報を貪欲に入手し、アイデアを活用して農業をしている農家さんなどがいました。今後は、フィールド調査を続けながら、先進的な取り組みをする農家さんの技術を、研修プログラムに取り込み、地域に普及する橋渡し的な役割を担いたいと考えています。また、女性農家を訪問し、農作業を手伝いながら、稲作知識のあるカウンターパートを巻き込み、農家さんと共に改善策を考え実行していきたいです。

コロナ禍で制限のある中手探りの日々ですが、現地の人々から学び、自分に何ができるか模索しながら活動していきたいと思います。

稲作ハンドブックを真剣に見つめる女性農家

台車を改良して農機具に転用している

 

 

 

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