【第2部】パタゴニア日本支社さまにお聞きしました ~食品事業「プロビジョンズ」~

2023年1月24日

パタゴニアの食品事業「プロビジョンズ」

SAA近藤さんは現在パタゴニアの食品事業であるプロビジョンズのディレクターをされていますが、この事業に関わられる経緯を教えてください。

近藤:2016年にパタゴニア本社の食品事業「プロビジョンズ」が立ち上がり、私は日本支社での立ち上げからずっと担当しています。もともと直営店スタッフとして入社し、その後マーケティング部に移り、後にマネージャーとしてPR広報を統括していました。

本社で立ち上がったプロビジョンズを日本でもやるとなった時、社内スタートアップのようなこの事業に関わりたいと思い、手を上げました。プロビジョンズは、事業規模的にはコアのアパレル事業と比べると1/100程度。アメリカ本社ですら20人くらいの規模です。ただ、その分意思決定が速い。そうしたことにワクワクしました。

SAAプロビジョンズの具体的な取り組みを教えてください。パタゴニア日本支社では、「リジェネラティブ・オーガニック認証(Regenerative Organic Certified™)」(以下、RO認証)*の取得に向け、国内4件の農家さんと協同されているということですが、そういった農家さんと共に商品化を検討されていますか?

*RO認証に関する詳細は、「【第1部】パタゴニア日本支社さまにお聞きました~リジェネラティブ・オーガニックと環境再生型農業を語る~」をご覧ください。

近藤:はい。食品事業プロビジョンズの既存の製品の中で、今、RO認証を取得しているのは、ニカラグアのマンゴーだけですが、事業としては、国内調達できるのが理想です。既に千葉県の酒蔵、寺田本家では、ROで協同している兵庫県の農家さんがコウノトリを育む農法で作ったお米を使用した自然酒を販売しています。また、最近では、同じくROで協同する福島県の酒蔵、仁井田本家の日本酒の取扱いが始まりました。背景にあるストーリーをいかに消費者に伝えていくかが大事なことなので、そこをパタゴニアの事業を通じて行っていきたいと考えています。

背景にあるストーリーとともに消費者へ

SAA価格に敏感な社会情勢ですが、プロビジョンズの戦略は?

近藤:立ち上げが2016年に始まり、最初の3年間は、背景(ストーリー)をいかに伝えて消費者に変革を促すか、ということに時間を使うとともに、店舗のお客さんやパタゴニアのウェブサイト上で直販していました。しかし、パタゴニアの顧客層が、必ずしもすべての皆さんが食(オーガニック)に関心を持っているわけではないという気づきもあり、今はオーガニックショップにも卸し始めています。食品は価格や量が重視されがちですが、手に取った食品の背景を理解する重要性を発信していきたいです。

SAA衣料を考えると、食や健康を考えるというのは自然の流れかと思います。食とあわせて健康についてもメッセージを発信されていますか?

近藤:はい、食を考えることで、地球の健康も自分自身の健康も改善することができるというメッセージを発信しています。地球に良いことは、人の健康にも良いことかと思いますので、つながっていますね。

SAA食べるものを変えれば健康が改善される、例えば有機食品を食べればアレルギーが改善されるなど、食と健康のつながりを示す科学的なエビデンスが少ない気がしますが。

近藤:食を改善すれば健康にベネフィットがあるという点については既にエビデンスはそれなりにあるんですが、それが一般の人たちに浸透しているかというとそうではない。また、消費者が行動を変えるところになかなかたどり着かないという課題感があります。

食品産業の経済的な価値は、マイナスのインパクトが非常に大きい。健康に関する部分(肥満、糖尿病)や、環境破壊、フードロス、気候変動の問題など。今作り出している食よりマイナスのインパクトの方が大きいので、食品産業の在り方自体を変えていきたいと考えています。

SAA日本は長寿大国なので、食と健康の面で日本として発信できるものがあるのではないでしょうか。

近藤:その通りです。和食は野菜や海の幸を使ったヘルシーなものが多い。日本の価値をグローバルに発信し、社会にインパクトを生み出したいと今まさに考えています。

健康面でも経済面においても、よりよい食を選ぶというのは、メンタルヘルスを含めたベネフィットが大きいです。家族との時間を大切にし、農家やコミュニティを支援し再生することにつながっています。色んな問題を解決できるのは「食」ではないか、と最近あらためて思います。

【番外編】に続く・・・


【番外編】パタゴニア日本支社さまにお聞きしました~パタゴニアってどんな会社~
【第1部】パタゴニア日本支社さまにお聞きしました~リジェネラティブ・オーガニックと環境再生型農業を語る 前編~
【第1部】リジェネラティブ・オーガニックと環境再生型農業を語る 後編~

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