【番外編】パタゴニア日本支社さまにお聞きしました ~パタゴニアってどんな会社~

2023年1月25日

パタゴニアってどんな会社?~社員に浸透するパタゴニア・バリュー~

SAAアメリカのベンチュラに本社を置くパタゴニアさんですが、日本支社にはどのくらい人数がいるのですか?どんな社員の方たちが働いていますか?

近藤:直営店が国内に22店舗あり、パートタイマーを含め800名弱が働いています。みんな、会社のビジョンに共感して入って来ています。やはりアウトドア好きは多いですね。特に店舗スタッフの場合は、商品をお客様に説明するにあたり、自分も実際にユーザーであるというのは大きいと思います。

SAA御社は理念やビジョンを大切にされている会社という印象ですが、社員の方への教育や研修はどのようなものがありますか?

近藤:パタゴニアではバリューをとても大切にしています。社内で大きな決断や発表がされるときは、本社・支社という枠組みを超え、店舗をクローズし、社員全員でその意味を考えたり祝ったりする機会が設けられます。

過去にはパタゴニアが事業に苦戦していた時期がありましたが、キャンプ場に社員を送り込み、「なぜ自分たちはビジネスをしているのか?」と、自分たちのバリューや存在価値を議論したこともあります。社員同士のコミュニケーションや同じ方向を向いて動いていくことを非常に重視しています。

売り上げよりも社会にポジティブなインパクトを

SAA本社と支社の関係性を教えて頂けますか?

近藤:外資のウェアメーカーが日本で商品を販売する場合、一般的には、日本企業がディストリビューターとして、ライセンスを取得し販売ビジネスを行なう場合が多いです。しかしパタゴニアの場合は、売り上げを上げることよりも、その地域において社会的なポジティブ・インパクトを生み出すことをゴールにしているので、自分たちの会社として支社を立ち上げています。本社と意向、想いを一緒にするということを大事にしています。

SAAこうした理念のもとで働いていると社員の方の環境や食に対する意識は自然と高まってくるんでしょうか。

近藤:食品のビジネスをするようになってから食や農業についてとか話すことが増え、自分で農業をするスタッフも増えてきています。自分のことで話しますと、サーフィンをしたり自然の中で遊んで、健康的なご飯を食べていると、自然の恩恵を受け自分自身が満たされるのがとてもよく分かります。自然に対する感謝や守らなければならないという気持ちも芽生えますね。

仕事も遊びも本気なパタゴニア社員

SAAサーフィンやアウトドア好きの社員を後押しするユニークな制度や取り組みはありますか?

近藤:例えば環境インターンシップ・プログラム。自分の関心のあるNPOなどに数週間から最長2か月間職場を離れ、給与をもらいながら活動に参加することができます。一例としては、創業者イヴォン・シュイナードの親友でありTHE NORTH FACEの創業者が立ち上げたNGOは、アルゼンチンのパタゴニア地方の広大な土地を購入し、環境保全を行った後に国立公園にする活動を行っていますが、このような団体の活動に参加する日本支社の社員もいました。

木村:Activism Hourという制度もあります。年に5日間特別な有給休暇が付与されて、自身が関心のあるアクティビズム活動に時間を使うことができます。NGO・NPOなどの活動に社会的奉仕活動として参加する人もいますし、海が好きな人、山が好きな人、クライマー(クライミングを愛好する人)、農業する人など、それぞれが好きなフィールドやアクティビティに関連する環境社会的な活動をしたり、また、集まってその情報交換や勉強会をしたりすることもあります。お互いにとっても、個人にとっても良い刺激になりますね。

SAA世界各地の幹部の人たちが一堂に会する機会などはあるのでしょうか?

近藤:コロナ前は年に2回グローバルセールスミーティングが本社であり、各リージョンのセールス担当が集って話し合う機会がありました。コロナ以降はなかなかありませんが、会社としては、直接会って話をする機会を非常に大事にしています。つい最近も、世界のリージョンのゼネラルマネージャーと本社のCEOが日本に来て1週間ミーティングがありました。

パタゴニアはアメリカのベンチュラに本社がありますが、本社を大学のように「キャンパス」と呼んでいて、自由にコミュニケーションをとる場として位置づけています。パーテーションはなく、社長室のドアも開けっ放し。基本的には、出勤が奨励され、雑談を推奨する環境が整っていますね。

SAAイヴォンさんの著書「社員をサーフィンに行かせよう」では、波がいいときにサーファーがオフィスにいるのは仕事に集中できないから効率悪いというお話しがありましたが、日本支社もそうなのでしょうか?

近藤:はい、いい波が来ているとき、サーファーはそわそわしますね。1時間くらい出ることはよくあります。

一同:すごい会社(笑)。事業も、組織もワクワクさせられる、イメージ通りの企業さまですね。お話を伺い、ますますファンになりました。本日は貴重なお時間を本当にありがとうございました。

Fin.

編集後記
リジェネラティブ・オーガニックを推進するパタゴニア。環境に徹底的に配慮し、「もっとも責任ある企業」として唯一無二の経営戦略で羨望を集めるアパレルブランドが、農業を通じて私たちの食と健康、地球の未来を真剣に考え、組織に、社会に、世界に一貫したメッセージを発信する姿を垣間見た。
今、洪水や干ばつが、アフリカや欧州、アメリカなど世界各国で多発し、世界中の農家が気候変動による異常気象に直面している。気候危機、食糧危機、土壌危機、「Regenerative Agriculture (環境再生型農業)」は、これらの危機に対する解決策になりうると私たちは考える。日本の農家と共にリジェネラティブ・オーガニックを推進するパタゴニアの先進事例から学び、ともに地球環境に配慮した農法を推進するプレイヤーとして、知見を集積し、取り組みを加速させていきたい。

【第1部】パタゴニア日本支社さまにお聞きしました~リジェネラティブ・オーガニックと環境再生型農業を語る 前編~
【第1部】~リジェネラティブ・オーガニックと環境再生型農業を語る 後編~
【第2部】パタゴニア日本支社さまにお聞きしました~食品事業「プロビジョンズ」~

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