2021年12月６日、ササカワ・アフリカ財団（SAA）とHarvestPlusは、東京栄養サミット公式サイドイベントを共同開催しました。持続可能で気候変動に強靭な農業戦略の一環として、アフリカにおける高栄養価の主食作物、特に生物学的栄養強化作物（Biofortified crops) の普及拡大を目指し、新たなパートナーシップを発表いたしました。

ルース・オニアンゴSAA会長による開会の辞とMCを務めるHarvestPlusピーター・ゴールドスタイン氏

第一弾として対象となるのは、SAAとHarvestPlusの一方または両団体が事務所を置くアフリカ9カ国（注１）ですが、中長期的には更に8ヵ国に広げていきます。そして、現地の様々なパートナーと協力し、既に有効性の実証された生物学的栄養強化作物を農家に普及し、微量栄養素欠乏症の改善に貢献します。

SAAとHarvestPlusの協働には以下が含まれます。

• 小規模農家の生物学的栄養強化作物や栽培資材へのアクセス向上。
• 生物学的栄養強化作物に関する農家への研修、栽培デモンストレーションの実施
• 農産加工業者の参画による生物学的栄養強化作物の付加価値創出
• 農家の資金、農業資材（種子や肥料）へのアクセス、マーケットへのアクセス改善
• 官民連携の促進
• 生物学的栄養強化作物を取り巻く環境改善のための政策提言
• これらの活動を拡大するためのファンドレイジング 

SAA北中理事長は、HarvestPlusとのパートナーシップについて次のように述べました。「SAAの新事業戦略では、アフリカの農村部における栄養改善をより重視しています。途上国の栄養改善支援のパイオニアであるHarvestPlusとのパートナーシップは、生物学的栄養強化作物を戦略の柱の一つである「栄養に配慮した農業」アプローチに組み込む上で非常に重要です。アフリカの生物学的栄養強化作物の生産・消費を拡大する絶好の機会となるでしょう。」

生物学的栄養強化作物の普及スケールアップに向けたパートナーシップを発表するSAA北中理事長

今回のパートナーシップでは、お互いの強みを持ちより、相互補完的に事業を行うことで相乗効果を生み出すことが期待されます。HarvestPlusは、主食作物の生物学的栄養強化（Biofortification）における世界的なリーダーであり、SAAは、現地政府の農業普及サービスと密に連携しながら、農業バリューチェーンに沿って小規模農家を支援してきた35年の経験があります。両者の専門分野を最大限活用し、小規模農家の食料・栄養の安全保障と生活の持続的改善という共通の目標に大きく貢献していきます。

HarvestPlusのCEOであるアルン・バラル氏は、次のように述べています。「小規模農家に寄り添い、強靭で再生可能、かつ栄養価の高いフードシステムを形成するというSAAの目標を、我々は共有しています。SAAは、生物学的栄養強化作物・食品を新戦略に組み込んでいます。このパートナーシップが、アフリカにおける生物学的栄養強化の拡大・普及を更に加速させることを大いに期待しています。」

SAAは、長年、持続可能で強靭、再生可能で市場志向型の農業開発に焦点を当て活動してきましたが、今年採択した新事業戦略（2021-2025)では、「栄養に配慮した農業」を新たな柱に追加しました。特に、生物学的栄養強化作物や栄養価の高い在来作物の生産増に取り組みます。HarvestPlusは、これまで世界で600以上のパートナーシップを形成し、種子や食料バリューチェーンに生物学的栄養強化作物を組み込む活動を行ってきました。SAAとのパートナーシップは、この生物学的栄養強化の拡大戦略に沿ったものです。また、政策提言の活動も、生物学的栄養強化作物の普及のための環境整備というHarvestPlusの戦略目標に一致しています。

注１．コンゴ民主共和国、エチオピア、ケニア、マラウイ、ナイジェリア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ

HarvestPlusについて：
ビタミンやミネラルを豊富に含む生物学的栄養強化を施した食用作物を開発・普及するパイオニア。生物学的栄養強化のエビデンスと技術におけるグローバルリーダーとして、世界の人々の栄養と健康の改善を目指している。国際食料政策研究所（IFPRI）に拠点を置き、国際農業研究協議グループ（CGIAR）の参加団体。現在、同団体とそのパートナーの活動を通じて、生物学的に栄養強化された約400品種の作物が世界40カ国でリリースされている。

セミナー動画（英語）
SAA-HarvestPlus 栄養サミット公式サイドイベント

プレゼンテーション資料一式
SAA-HarvestPlusパートナーシップ発表